いろいろなことを体験し、
自分の頭の中にインスパイアされるものが溜まっていった時、
そうしたときに素敵な文章に出会うと、
その体験が自分にもたらしたものが、体内に染み込んでいく気がする。
若松英輔さんからいただいた、素敵な一節。
歩くように考えるのではなく、歩くことと考えることの間に隙間がなくなる瞬間に、
出来事は起こる。ここでの「歩く」とは、静止していないことを表現してもいるが、
慌てふためいているのでもない。
時空になじむように、世界に寄り添うように生きることを意味している。
疾走する者には、道端に咲く花は容易に目に入らない。
その花弁を彩る神秘と真実はけっして知られない。
分かろうとすることが情愛の証であるなら、いつでも立ち止まれるように
ゆっくりと歩き始めることはその顕われであるのかもしれない。
また歩くことは、挨拶のようなものかもしれない。
それは分かることから分かり合うことへと育って行く。