こにたん、組織開発の日々

2022年4月より組織開発を生業に。始める前から天職の確信

言葉は現実をつくる

 

読書ノート、哲学科教授の納富信留著「対話の技術」より抜粋

 

言葉とはどういうものか、私たち人間はなぜ言葉を発するのかと言う問題です。

対話と言う問題を哲学から見るとどうなるのでしょうか。

 

3つのポイントがあります。

言葉は伝達の道具ではなく思考そのものだと言うこと、言葉は現実を形作ること、
そして、言葉は相手に発することで成り立つことです。

 

私たちは通常、心の中にある考えを、言葉と言う手段で相手に伝えると思っています。

しかし、その見方は言葉の本性を捉え損なっています。まず、考えがあってそれを言葉に

して運ぶのではなく、私たちはそもそも言葉で考えているのです。

 

言葉はたんに何かを写し取ったり、記述して情報を伝えたりするものではありません。

言葉は現実を作り、変えていきます。もっと言うと、言葉を語る人、語られた相手の

あり方を変えていくものです。

典型的には、「私はあなたが好きです」や「結婚しましょう」といった発言は、

単に私の心のあり方を表示するのではなく、この発言によって2人の現実を新たに作る

行為なのです。哲学で「言語行為(スピーチ・アクト)」と呼ばれる語りの遂行は、決して

特殊な言葉のあり方ではありません。正しい人、信頼できる人、人のあり方は、自分と

他者がどう言葉を語っていくかで形作られるはずです。

 

言葉は最初から対話的なものだと言えるでしょう。

私1人だけの言葉と言うものは、実は存在しません。つまり、言葉は語り聞くという

相互的なものとして成り立っているので、言葉があるから対話が成り立つのではなく、

そもそも言葉が対話的だと言えるのです。

 

つまり、思考は、言葉を自分の内に向けて発する二次的な対話なのです。

相手に向けるのではない言葉、なにかを作り出すことを目指さない言葉は、言葉の役割を

果たす事はありません。