出会えて良かった
前日につづき、植物状態患者の本の話。
患者さんを担当する看護師はプライマリーと呼ばれ、専属の担当になる。
ある看護師さんは「本当にこの人に出会えてよかった、って思える人たちに、ここに来て
会えてるような気がする。彼らのおかげでこういうことをさせてもらえたってことが、
ひとつの拠り所になっている。やっぱり癒されているのは私の方なんだな〜って
つくづく思う、だから感謝しないといけないって」と言う。
看護師さんにとって患者さんの存在が、自分の支えとなる経験になっている。
驚いた、お互いの存在がなくてはならない相互関係を築いている究極の形だなぁと。
由佐美加子さんのメンタルモデルと紐付いた。
人は人は生まれて心の中に、「欠けている」という痛みをもつという。欠けた4つの種類
を、価値なしモデル、愛なしモデル、一人ぼっちモデル、欠陥欠損モデル、という。
欠けているものを埋め合わせるために必死に生きている。
欠けたピースを何で埋めるか、
それは他者との関係性の中で得られる、愛情や温もりやお役に立てているという思い。
人は相互補完関係の中で、生きている手ごたえを得られるのだろう。
ケアを行う者にとって「ふれあい」が大きな意味を持つという。それは「この世界で他の
人と実際に関わっていると言う感覚」であり、この感覚は、ケアの実践によって自分が
"場の中にいる"つまり「世界の中に自分の落ち着く場所」を得ていると感じさせ、この様
な場を与えてくれる「他者」は「私の不足を補ってくれ、私が完全になることを可能に
してくれる存在」なのだそうだ。ゆえに、他者は自分の一部であり私とはAppropriate
othersの関係にあるという。そして「場の中にいて、私と補充関係にある対象へのケアに
よって中心化され、全人格的に統合された生を生きること」になるという。
Appropriate othersとは、適切な然るべきふさわしい他者といった意味。
これこそが「本当にこの人に出会えてよかった」、そういった関係性だろう。
そのような人に出会うために、人は生まれてきているように想う。