苦悩の意味
喜怒哀楽、その中で人は喜び楽しみを求めて生きている。
怒りや哀しみを求めて生きる人はそういないだろう、
だけどその二つは、自分自身を変えていく起動力。
怒りと哀しみ、それをずっと感じている事は辛いので、心の底に沈めていく、
場合によっては無かったことにして、人生の時計の針を前へ進めていく。
でもその怒りと哀しみを忘れようとして、自分の外側に積み上げていくものが鎧になった
り、自分のアイデンティティーを形づくった足場になっているのかも知れない。
過去の自分にあった怒りと哀しみ、そこに目を向けて光を当てられるようになると
「こんな自分でいてもいいのだ」と、我愛の心に至れるのではないか。
今読んでいる神谷美恵子さんの「生きがいについて」で、こんな一節があった。
『苦悩がひとの心の上に及ぼす作用として一般に認められるのは、それが反省的思考を
うながすという事実である。苦しんでいるとき、精神的エネルギーの多くは行動によって
外部に発散されずに、精神の内部に逆流する傾向がある。そこにさまざまの感情や願望や
思考の渦がうまれ、ひとはそれに眼を向けさせられ、そこで自己に対面する。人間が真に
ものを考えるようになるのも、自己にめざめるのも、苦悩を通してはじめて真剣に行われ
る。〜中略〜。
この意味で「人間の意識をつくるものは苦悩である」というゲーテのことばは正しい。
苦しむことによってひとは初めて人間らしくなるのである。』