こにたん、組織開発の日々

2022年4月より組織開発を生業に。始める前から天職の確信

小さく小さく生きる

読書感想文 月間致知6月号

102歳の巨匠 いま、この時を生きる

画家 野見山暁治さん

 

出征した満州で、一面寒々として凍りついた、灰色で全く色のない世界の中に、

地面に滲んでいる赤い色を見つけた。

 

この描写を読んだときに、なぜか読む眼が止まった。

読み進めることなく、何だろうって想像を巡らせた。

 

その先を読むと、赤色の上にかぶさった氷を靴の先で削り落としたら、

みかんの皮が出てきたのだという。そして野見山さんはそのみかんを手に取って、

「世の中には色というものがあったんだ」と震えたのだと。

 

そこから思いを巡らせた。なぜこのエピソードに惹かれたのかなあと思った時に、

ブラジルから帰国後の人生を迷った4年間を思い出した。

これからの生きかたが分からずに、いつまで経ってもトンネルの出口が見えずもがいて

いた。その時には黒々とした中にいる気がして、豊かな色を感じられていなかった。

 

野見山さんが見つけたミカンの皮の色、僕にとって色となったのは人の心の豊かさだった

のかもしれない。どんな人も力強い心を持っている、その美しさに気づいた頃から、

世の中に色を感じられる心を取り戻せた。

 

野見山さんの言葉にぎゅっと胸を締め付けられた「小さく小さく生きていくものだ」。

人間が死に直面したときに思うのは、有名になろうとか大きなことをしようという思い

ではなく、目の前の何気ない出来事や人とのつながりを慈しみながら、小さく小さく

生きるものだと。

 

目の前を懸命に生きる、小さく生きてることで素晴らしいんだよと、

大きく背中を押された気がする。ありがたい。