能動的な力
エーリッヒ・フロム、「愛するということ」の"愛の理論"より構成
どの時代のどの社会においても、人間は同じ1つの問題の解決に迫られている。
いかに孤立を克服するか、いかに合一を達成するか、いかに個人的な生活を超越して、
他者との一体化を得るか、という問題である。
愛は、人間の中にある能動的な力である。
人を、他の人々から隔てている壁をぶち破る力であり、人と人とを結びつける力である。
愛によって、人は孤独感・孤立感を克服するが、依然として自分自身のままであり、
自分の全体性を失わない。愛の能動的な性格を、わかりやすい言い方で表現すれば、
愛は何よりも与えることであり、もらうことではない、と言うことができよう。
あらゆる形の愛に共通して、必ずいくつかの基本的な要素が見られるという事実にも
愛の能動的性質があらわれている。その要素とは、配慮、責任、尊敬、知である。
生産的活動で得られる一体感は、人間同士の一体感ではない。
祝祭的な融合から得られる一体感は一時的である。
集団への同調によって得られる一体感は偽りの一体感に過ぎない。
完全な答えは、人間どうしの一体化、他者との融合、すなわち愛にある。