原罪
「不正は無くならない。絶対に。
藩のために命をかける。かっこ良く言えば、侍の生き様って言うんですかねぇ。
昔で言う藩、今で言う会社、それを生かすためなら人の命より会社の命を優先しちまう。
侍は藩から出されるのを負けだと思っているんですよ。」
最後に、不正を告発した万年係長の語りの言葉だ。
見終わって自分の原罪を思い起こした。記憶の底に沈めていた思い出。
若いころ自分は、先輩が大損をして課が解体になり、その後の立て直しに大変苦労した。
その当時は自分を、被害者のように思っていた。
でもその後の時代、自分が加害者に回っていた原罪を思い起こした。
課が解体したときに、一人ぼっちで組織の支援を得られず苦悩したこともあって、一人で
闘うのでは無く、組織とともに生きる必要がある、そうでないと守られない、と思って
いた。ゆえ、組織に迎合する気持ちがあった。
原罪、それはその後の組織で、こんな先輩は最低だと思いながらも、奴が小汚い根性で
損の先送りをすることを、そのまま許してしまったこと。
僕が上に告発してでも、やつを排除してでも、後に続く後輩へ良い環境を残すために
闘おうとしなかったこと。
「逃げる男にはならない」、そう願っていたのに、逃げていた自分がいたことを、
その罪を記憶の底に、なかったことに封印していた事を思い出した。
後輩たちはまだ同じ会社にいる。ちゃんと彼らに謝ろう。
自分がまだこの会社にいて、組織を良くする仕事に就いたのも巡り合わせ。
自分には忘れてはならない原罪があることを自覚して、そして「人」として生きよう。
強くありたい。