こにたん、組織開発の日々

2022年4月より組織開発を生業に。始める前から天職の確信

教えることをしない

 

技がどのように伝承されていくかという本を読んでいる。

 

出産を助ける助産師さんの話に、「教える事は、熟練者になる産婆のアイデンティティーにも、学習にも、何ら中心的では無いように見える」との言葉があった。

熟練者は後進に教えると言う立場ではなく、仲間になって技を伝えていくという。

 

技はhow toだけで伝えることができず、技は自ら追求していくしかないという考えが背景

にある。また後進の助産師は、お産の「場」で仕事の仲間として、役割を担いながら見て

技を学んでいく。

 

そして熟練者は、妊婦をどうケアする、どう介助するかという技そのものを教えるという

より、お産の考え方、価値観、哲学、人間に対する慈しみなどを大切にしていること、

そういったものを伝えているのだという。

 

先生、生徒の教える側、教えられる側の関係ではない。

仲間という横の関係で、ただしその道の先達として後進の人へ持てるものを全て惜しみ

なく分かち合っていく。時に後進の人へ厳しい指導があるとしてもそれは、赤ちゃんや

お母さんの生命と身体に対して責任を果たす使命感に基づいたものなのだろう。

 

助産師が、なぜその人のもとで働こうと思ったかを聞いたところ、

熟練助産師の良いところも悪いところも全部、その人が好きだからと言ったと。

その人間に「惚れる」という師事の様子があるそうだ。

 

技だけでなく、人間に惚れて技は伝承されていく。

その心が中心なんだろうな。